物語の構成要素というと、プロップや大塚英志のような物語の下敷きのことを連想されるかもしれないけれども、今回思いついたことはそうではなく、物語のコンセプトのことだ。今日イットさんと話題になったが、「特定の映画と映画が似ていると言われるとき、本筋以外に似ていることがある」といった次第である。
例えば、『マトリックス』は『ブレードランナー』の影響下にある作品だが、別段レプリカントが出てくるわけでも、デッガードそっくりのキャラクターが出てくるわけでもない。多分、別のところに関連・類似があるのだろう(思いつく範囲では、例えばSFに哲学を導入した点)。
そこからヒントを得てみて、物語のコンセプトを要約する、コンセプトを真似て作品を考えるなどをすると物語の体操になるかもしれない。
例えば、しょっちゅう私が話題に挙げる「エヴァンゲリオン」を少しコンセプトを解体してみる。
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「何故使徒と戦うか」⇒カフカなどに見られる実存的テーマ
理由も分からず戦う不条理な物語⇒同じくカフカ小説
アニメに哲学という発想⇒ルーツは大友克洋作品と押井アニメ⇒さらに辿ると「SFに哲学」は『ブレードランナー』から始まる。
オカルト・宗教をアニメに用いる⇒ロマン主義など反伝統的な芸術運動に見られる手法で、現実逃避の材料にされる傾向もしばしば。
後半の物語の崩壊(謎の伏線)⇒カフカ『審判』かと思いきやTVドラマ『ツイン・ピークス』。
TV版のラスト⇒いわゆる「メタフィクション」と呼ばれる現代文学によくある展開。寺山修司の映画のラストにも主人公が映画について問うシーンがある。
引用・パロディ・オマージュで作品を成り立たせる⇒ポストモダン哲学は基本的に全ての思想は引用に過ぎず、新しいことは過去の作品を参照することでしか生まれない。
芸術と娯楽の境界線の消滅⇒プログレッシヴ・ロックはロックにクラシックの形式を与えたジャンル。1970年代カウンター・カルチャーは大衆作品(ロック、アニメ)にクラシカルな材料(クラシック・文学)を取り入れることでより発展した。以降プログレ自体古典となるが、内容の難解さのため、コア向けの音楽となる。
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等々、作品が何に影響され成り立っているか、ジャンルとジャンルの類似は何かを考察するのは楽しいかもしれない。
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