カフカの『審判』は次々と物語の謎が浮上していき、それらが解決しないまま結末を迎える。文学作品が例だと分かりにくいかもしれないが、身近なものだと「新世紀エヴァンゲリオン」の後半パートに見られる。「エヴァ」では前半がSFロボットアニメで綿密な伏線で成り立っているのに対し、後半は哲学アニメとなりその伏線が反転される構図となっている(例:使徒ではなくゼーレがサードインパクトを引き起こそうとしている、いままでアダムだと思われていた存在が実はリリスだった)。これは前半のシナリオの完成があって初めて出来た技法なのだ。
『審判』でも「エヴァ」でも物語上の謎は伏線というよりは物語を奏でる楽器のような役割を果たしている。楽器という言葉を持ち出したのは、この技法が音楽のような形式美を作り出すからだ。どの楽器を使うか、その楽器をどう奏でるかが肝心だろう。
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